〝福島〟から1年半——再び、京都から、よびかける(第2次京都アピール)
【呼びかけ人】
浅岡美恵 弁護士、NPO法人気候ネットワーク代表
安斎育郎 立命館大学名誉教授、放射線防護学・平和学
飯田哲也 NPO 法人環境エネルギー政策研究所所長
大島堅一 立命館大学教授、環境経済・政策学
竹濱朝美 立命館大学教授、環境社会学
深尾正之 元静岡大学教授、物理工学・原子炉物理
宮本憲一 元滋賀大学学長、財政学・環境経済学
ヨハン・ガルトゥング 国際NGO TRANSCEND(トランセンド)代表
和田 武 日本環境学会会長、元立命館大学教授
3月11日の東日本大震災による原発事故、放射能災害が発生してからこの夏、1年半が経とうとしている。
私たちは昨年9月、「14基もの原発群が集中立地する若狭湾沿岸から、ほぼ全域が半径30キロから80キロ圏内に入る京都において、その現実が内包する危険性を直視し、いま、原発政策・エネルギー政策のあり方を府・市民レベルで真剣に検討・模索すべき時」として、〝原発ゼロ・「京都アピール」〟を発表し、エネルギー政策に関する広範な討論を呼びかけた。また、京都の各大学において「京都アピール」講演会を重ね、1000名を超えるみなさんから「賛同」が寄せられた。
いうまでもなく、京都は、大学と学問の街、歴史と文化が息づく都市であり、年間5千万人もの人々が訪れる観光都市でもある。人知では制御不能となる原発事故がひとたび起これば、京都府民の命綱ともいうべき琵琶湖も汚染され、先人が築きあげてきた文化や遺産、産業は深刻なダメージを受け、京都での社会生活は長期にわたって深刻な打撃を受けるに相違ない。
ところが、政府は先日、大飯原発再稼働という「政治判断」を下した。その際、首相は「福島を襲ったような地震・津波がおこっても、事故を防止できる対策と体制は整っている」と断言した。しかし、高レベルの放射線に阻まれて事故原発内部の実態さえ把握されていない現在、事故の原因究明がなされていないばかりか、政府自らが「とりあえずの対策」として指示した30項目の「安全対策」、例えば「免震事務棟」、「フィルター付きベント」などの設置でさえ3年先のこととされている。
もともと、福島原発事故によって明るみに出たのは、この国の原発開発をめぐる政治・経済のあり方を含む〝構造的欠陥〟であるのに、個別原発に対する「場当たり的な対応」で再稼働の既成事実を積み上げ、なし崩し的に3・11以前の状態に戻そうとするようなやり方には、断じて与するわけにはいかない。
また、現在の知見では、大飯原発近くの3本の活断層が連動した場合も含め、「大飯原発をどのような地震・津波が襲う危険があるのか」の科学的な解明はなされていない。さらに、政府は、大飯原発再稼働を「夏場限定」としてではなく、「原発は重要な電源であり、今後も運転を続ける」と踏み込んだ方針を提起している。これは、原発を「基幹電源」として位置づけ、原発に固執する財界・電力会社の意を受けてのものである。
これこそ、「安全神話」の復活にほかならないのではないか。こうした「安全神話」こそ、福島原発事故を引き起こした最大の教訓だったはずである。そこから何一つ学ぼうとしない政府と電力会社の態度を、私たちは決して許すわけにいかない。
原発はいったん事故が起これば制御不能に陥る危険があり、その場合、地域社会が崩壊の危機に瀕することを今回の福島の事故は明らかにした。また、原発は、何の価値も生み出さない膨大な放射性廃棄物の処理・処分を未来世代に委ねることを前提としており、倫理的にも重大な問題を孕んでいると言わなければならない。
戦争の惨禍を教訓に新しい憲法を生み出した経験を想起し、また、ドイツが20年余の国民的討論の果てにエネルギー政策の転換に舵を切った事実にも学び、私たちは、現実を直視した対話と討論を起こすことを求められている。いま、フクシマの現実を直視し、科学者や専門家、各分野の識者が政治的立場や考え方の違いを超えて広く対話し、発言し、行動する時ではないだろうか。エネルギー政策を国や企業だけに任せるのでなく、市民と地域が主体的に議論し参加する「エネルギー・デモクラシー」ともいうべき運動を起こそうではないか。
① 「原発ゼロ」も視野に、原発政策の抜本的転換、再生可能な自然エネルギーの本格的導入、省エネルギー社会の実現をめざして力を合わせよう。
② 安全性が確認されないままの、関西電力大飯原発3, 4号機の再稼働は、地元福井県のみならず関西一円に破局的事態を招きかねない。「再稼働」方針を速やかに撤回させよう。
③ 「原発は必要」「やむをえない」と考えている人々も含めて幅広い対話と討論を広げ、府民・市民の声をふまえた「エネルギー・デモクラシー」「エネルギー自治」の京都をめざそう。